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絵本

【絵本作家】 はやし ますみ


今回は近江八幡市安土町下豊浦にお住いの、絵本作家のはやしますみさんをご紹介します。

20年近くグラフィックデザイナーをされ、絵本作家になられた林さんですが、子供の頃は絵は好きだけれど美術やアートには興味がなく、外遊びが大好きな活発な女の子だったそうです。中学生になって読まれた一冊の本が、林さんの人生を大きく変えました。「佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』を読んで、こんな面白い大人のいる世界で働きたいと思ったんです。大人のための絵本かもしれないと思える様な、子供を一人の大人として扱ってくれている話なんですよ。作者が美大出身なんで、美大を目指すことを決めました」と林さん。美大に合格し、デザイン学科マンガ専攻でタブロー(tableau)を学ばれました。

「朝からバイトして、動物園で2時間スケッチ。午後から学校へ行って制作に取組む毎日でした」と笑われます。

卒業後、デザイン会社に就職されますが1年で退職。「絵本作家になりたかったんですが、先生も誰もがどうしたらなれるのか分からなかったんですよ。入社した会社はレベルが高くて…、しかしこの一年の学びがその後の生活を支えてくれたんですよ」と話されます。

結婚を機に滋賀に転居され、グラフィックデザインの仕事をされておられましたが、ある日、文具屋さんで「絵本」や「イラスト」を学べる『ギャラリーVie絵話塾』のパンフレットに出会われます。念ずれば花開くですね。「学費を払って神戸まで通うからには、1年で結果を出す。5年間で道が開けなかったら、絵本作家はあきらめると決意して行きました」と林さん。背水の陣で臨まれた絵話塾で作った作品を、第10回ピンポイントコンペへ出展。『ねーねーのしっぽ』は見事、優秀賞を獲得されました。

この作品が4年後の2013年には、絵本として出版されました。「審査員と作品のめぐりあわせが良かったのでしょうね。本当にラッキーでした。テクニックがないのに、作品に込めた私の熱いエネルギーが、実力以上に評価されたようです」と話されます。

2010年に短編の話を幼児雑誌に掲載され、2012年にはジャズプレーヤーが子供に絵本を読み聞かせるイベント用に作った『とんとんとんだれですか』が、初めての絵本として出版されます。

絵本の創作活動についておたずねすると「自分の体験や日常で心に引っ掛かる出来事を、動物を介して物語にしています。絵を描く時は、大学の先生の教えを未だに実践して心の支えとしています。そして、読み手が参加型になる様な絵本にすることも心掛けています」と。

今後もどんどん絵本を描きたいと話される林さんは、現在、絵本4冊とさし絵2冊を発刊され、2冊の絵本を製作中とか。

そのうちの1冊は滋賀の生態系が描かれるという、新たな作風へ挑戦されています。

子供達とのワークショップが大好きで、自由に発想し想いを形にする体験ができるワークショップのイベントを、今後もどんどんやっていきたいと熱く語られる林さん。

これからも作家活動や原画展、読み聞かせ会、ワークショップと精力的に活動されることでしょう。


http://mifun.exblog.jp

  


【絵本作家】 くせ さなえ


今回は近江八幡市の絵本作家、くせ さなえさんをご紹介します。

もの心が付いた時から絵が好きで、外遊びから帰ると少女漫画を写したり、想像の絵を描いたりの毎日だったと話されるくせさん。本を読んで物語を絵に描く授業を受けて以来、本を読んでそれを絵にすることが大好きになられました。小学校の卒業文集では「絵本作家になる」と書かれ、その頃から将来を決められるなんて…、すごいですね。高校生になっても「大学に行って勉強するなら絵しかない」と、2年生から美大受験のための塾へ通われました。大学に進学後は、絵本コースを選択され学ばれました。卒業を前に、絵を描ける仕事はないかと就職活動をされ、テキスタイルデザイン会社へ就職されます。「今まで親にお世話になったので、働いて安心してもらいたかった」と話されますが「5年間経ってあきらめきれなかったら挑戦する」と心に決められていたと笑われます。

5年半で一旦退社され、アルバイトの立場となって絵本作家を目指されます。インターナショナルアカデミー絵本教室を経て、いよいよ実家で創作活動開始です。翌年、第28回講談社絵本新人賞にて佳作を受賞。4年後の2010年には近江八幡の日常の風景を描いた『ぼくとおおはしくん』が第32回講談社絵本新人賞を受賞され、絵本作家『くせ さなえ』としてデビュー。翌年に絵本『ぼくとおおはしくん』が講談社から出版されました。「賞を受賞すると記念の展覧会が開けるんです。そこでたくさんの編集者や出版社に出会うんで、手紙を書いたり、出向いたり売込み活動ができる様になるんですよ」と話されます。そして翌年、編集者からエッセイストが書いたお話に絵を描いて欲しいと、くせさんに依頼が来ました。自分の描いた話でないため、直接エッセイストに会いお話を聞いたり、お話に出てくる場所へ行ったり、描かれている子供達にも出会ったりして、ようやく『あかいボールをさがしています』の絵本が仕上がりました。くせさんの作られる絵本のテーマは、日常生活の中で感じた身近な事が多く、子供の遊ぶ姿や自分の子供の頃の思い出、このあたりの風景などです。2013年に出版された絵本『ゆびたこ』は、とっても親近感を感じる作品に仕上がっています。ある日、家族を描いていたら、おいごさんのことを思い出されたそうです。「聴覚障害者のおいごがいるので、手話に興味があったんです。おいのことを絵本にして、分かりやすく楽しめる手話の本ができないか、と考え始めていたんです」と、くせさんは話されます。そして偶然にも、編集者から手話の絵本の依頼がきたのです。『しゅわしゅわ村のどうぶつたち』と『しゅわしゅわ村のおいしいものなーに?』は、手話の本としてだけでなく、絵本としても十分楽しめる本として完成、出版されました。現在はその三作目として『しゅわしゅわ村のだじゃれ大会』という絵本を創作中だそうです。

今後の活動についてお聞きすると「手話やだじゃれをテーマに絵本を描きたいですね」とくせさん。近直、親しく交流されている絵本作家さんと『二人展』を近江八幡にて企画中とも。来年には、大津で個展も計画中とお聞きしました。絵本作家としてこれからも大きく羽ばたかれることでしょうね。


『ぼくとおおはしくん』 講談社
『あかいボールさがしています』 小学館
『ゆびたこ』  ポプラ社
『しゅわしゅわ村のどうぶつたち』 偕成社
『しゅわしゅわ村のおいしいものなーに?』 偕成社